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味噌の仕込みと天然醸造の数字と覚悟

味噌には天然醸造(てんねんじょうぞう)と加温する速醸(そくじょう)という方法がある

味噌

味噌はタンパク原料である大豆を煮て潰して、米や麦などのデンプン原料をコウジカビというカビを温度管理をして繁殖させて、潰した大豆と麹、それに塩を混ぜ合わせて出来上がります。

まとめると

  • 大豆を煮て潰す
  • 米(麦)をコウジカビを繁殖させ麹にする
  • 加熱した大豆と麹、そして塩を混合して容器に保管

この3工程になりますね。

味噌作りと言っても、人間がやれるのはこれまでです。
あとは、コウジカビが気温の温度変化などを感じて味噌にしてくれています。

味噌のつくり方は3つの工程しかなくシンプルですが、シンプルが故に奥が深いものですね

そんな味噌ですが発酵の仕方(熟成方法)が2種類あります。

天然醸造と温醸という仕込み方です。

天然醸造(てんねんじょうぞう)とは

天然醸造の味噌

仕込んでから人為的な加熱をしないで、約一年間ほど寝かしたお味噌のこと。
少し定義を詳しく説明すると、味噌の醗酵を促進するために加温処理をしないで、かつ食品衛生法施行規則別表第1に掲げる添加物を使用しないもの。
余談話ですが別表第1に記載されている添加物は約400種類あります。保存料や旨味調味量などです。添加物は使ったことないのでよくわかりませんが、厚生労働省のサイトを見るとカタカナばっかりでした。触らぬ神になんとやらですね♪

簡単に言うと、味噌の歴史が1300年以上有りますが、1300年前からある昔ながらのつくり方ですね。

速醸(そくじょう)法とは

仕込んだ味噌を加温できる部屋においておいて、
味噌を強制的に発酵するやり方。温醸、即醸ともいいます。

分かりやすく言うと、トマト栽培でも露地栽培とハウス栽培が有ると一緒ですね。

このやり方で作ると味噌が約3ヶ月でできるようです。
しかし、味噌本来の味や香りが乏しいこともしばしばあるようです。

速醸法のメリット

速醸は味噌業界に大きな変革をもたらしました。

まず、1950年の食糧不足、食糧増産体制の時に、
この加温する方法は活躍しました。
味噌を一年寝かさなければいけないのに、3ヶ月で問題ないので、
原料さえ確保できたら、生産量が約4倍になります。

また、同じ設備で4倍の生産量になるので、生産コストも大きくダウンできます
そして、一年寝かさなければならない在庫が4分の1になるので、資金繰りも楽になりますね。

天然醸造一筋でやるには『資本』と『信念』が必要

よく顧問の経営会計士さんに言われるのが
『マルカワさんは在庫でお金を寝かしているのが半端無く多い、
そして、今は借入の金利が安いからなんとかなっているかもしれませんが、借入金の額が年々大きくなっているよ…』のような指摘をしばしばいただくことがあります。バランスシートを見てもそのことは明らかです。

会計事務所様のおっしゃる通り、味噌の原料を仕入れて、従業員さんや生産ライン・設備を可動して
商品になる(お金が入る)のが、今から一年後ですから、それだけ資金が在庫として寝るのは火を見るより明らかですよね。

味噌蔵は札束が眠っている

また、商売が大きくなれば大きくなるほど、味噌を寝かす量が増えるため、資本が必要になる。
一昔に比べて有り難いことに仕込む量も出荷量もケタ違いに大きくなりましたし、お取引していただく商品や味噌の種類も増加した。

マルカワみその味噌蔵

こんな田舎の一般人、一般庶民の家族に大きなお金など畳をひっくり返してもないため、借入れをしなければいけない…。
当然、自己資本比率は低くなる。そして、総資本回転率も一年寝かすのであれば、数値は1前後になってしまう…。仕込み量が増えれば増えるほど仕込みに使うお金が大きくなり、自分のとこの資本で回らなくなってしまうのが天然醸造の財務諸表らしい…。ここ2,3年でP/Lなどをみささせていただいて、このことがつくづくよくわかった。

温醸さえしていれば、在庫負担も4分の1になりますし、その在庫が現金になって、
資金繰りや自分たちの生活も少しは豊かになる、プラス自己資本比率も高くなり、総資本回転率も上がり、『利益の確保』という面では温醸は素晴らしいと思う。
しかし、温醸は絶対にこれからはしないと感じた…。

社長曰く『麻薬と一緒、やったら抜け出せない…』

天然一筋の味だけがとりえの味噌屋さんが温醸をした話

社長からとある味噌屋さんのお話を聞いたことがあります。

味噌の大豆

 

昔々、田舎武生の街に夫婦でボチボチと味噌を手作りで仕込んでいる蔵元さんが居らっしゃったようです。

天然醸造一筋で丁寧なモノ作りと真面目なお人柄が素晴らしく、天然で仕込んだ味噌は品質も高く、お客様から絶大なる支援を頂いていたようです。

よくお客様から『こんな美味しい味噌は食べたことがない…』とお褒めの言葉を頂いたようです
そして、本物の商品や良いものはクチコミで伝わり、お客様がお客様を連れてきて、その蔵元さんの味噌は売れに売れたようです。

しかし、売れたまではよかったのですが、今度は仕込んでから一年寝かさなければならないので、味噌の熟成期間が短く(味噌業界では若く)なってしまいました。

若い味噌は商品として出荷できないので、お客様に『申し訳ございません、今仕込みをしておりますので、あと一年程待ってください…』とも言えず、設備投資をして温醸室を作り、味噌を加温しました…

そして、温醸された商品をお客様が頂いて発した言葉は
『こんなまずい味噌は食べたことがない…』と感じたそうです。

その後、その味噌屋さんは天然仕込みにもどることはできず、廃業しなさったとお聞きしました。

経営学上は温醸と天然をバランスよく仕込むというハイブリット方式でやっていれば安価で大量生産の味噌は温醸。高価で少量生産のモノは天然で仕込むという事をすれば問題ないのかもしれませんが、醸造姿勢やお客様から見える目というのはどのような感じで見えるのかな…と感じました。

たとえ話でお百姓さんの話

例え話しですが、無農薬で野菜をつくっている方がいるとします。
100ある土地の50を慣行農法で行い、残りの50を無農薬で作るよりも、100の土地すべて無農薬で取り組んでいたほうがお客様視点から見ても、どっちが無農薬への取り組みが熱心かわかりますよね♪

そんなことを感じた。

天然で仕込むということは品質管理も大事になる

天然で仕込むといろんな面で小回りがきかないですし、どうしても一年後の出荷量、生産量を適正に持っていくのは簡単ではありません。しかし、色んなことがあっても、お客様との約束や天然醸造の姿勢はやりきりたいと感じた。

マルカワみそ河崎宏

30年前、社長が駆け出しの時に、会長に尋ねたそうです。

『親父、なんでウチは天然で味噌を仕込んでいるんや?
周りの蔵元は温醸室とか加温の設備が有るで~』

会長いわく『そんなの簡単やが、天然で一年寝かした方が美味しいからや』

それを聞いて、自分も天然醸造一筋でやっていこうと決めたようです。

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